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9628 燦ホールディングス [企業調査]

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本日は、燦HDの記事をまとめていきます。
燦HDは四季報をぱらぱら読んでいたら見つけました。

燦HDに注目した理由
1.3期連続して増収増益であり、営業利益率も10%以上を維持
2.5期平均の営業利益26億、ネットキャッシュ47億に対し時価総額140億
3.葬儀関連のサービスを展開しており、令和22年まで死亡者数は増加見込み

バリュー、グロースの側面からも面白い会社だと思ったので調査しました。
ぜひ、最後までお付き合いください。

【競合比較】

主要数値を競合他社と比較してみました。

コード 企業名 時価総額 営業利益 営業利益率 Net cash 予PER
9628 燦HD 139億円 28億円 13% 47億円 7.1倍
2485 ティア 145億円 11億円 8.8% -1億円 20.8倍
2344 平安レイサービス 129億円 19億円 18% 107億円 9.0倍
7040 サン・ライフHD 62億円 11億円 8.7% 119億円 9.6倍
7864 廣済堂 177億円 25億円 6.9% -43億円 32.2倍

※2019年7月27日時点の数値です

廣済堂は旧村上ファンド系のレノが大株主に名を連ねており、株価として割安性はあまりない印象です。ただ、セグメントが「情報76(0)、葬祭24(31)、他0(17)」となっており、純粋に葬祭事業だけ見ると売上高86億円、営業利益26億円となります。廣済堂は競合他社として決して無視できない存在でしょう。

他社と比較して燦HDが最も稼いでいましたが、財務面では「平安レイサービス」と「サン・ライフHD」も潤沢に資金がありました。直近の指標をもう少し詳しく見ていきます。

コード 企業名 自己資本比率 ROE ROA 配当利回り PBR
9628 燦HD 83.2% 6.9% 5.7% 2.6% 0.5倍
2485 ティア 65.1% 8.2% 5.3% 1.6% 1.6倍
2344 平安レイサービス 55.2% 7.0% 3.9% 2.8% 0.6倍
7040 サン・ライフHD 17.7% 9.4% 1.7% 3.4% 0.9倍
7864 廣済堂 35.2% 2.0% 0.7% 0.6倍

※2019年7月27日時点の数値です

次に従業員に関する情報です。燦HDは平均年齢が高いことが若干気になりますが、年収が790万円と高額なため、競合他社へ優秀な人材が移る心配もなさそうです。

コード 企業名 (連)従業員数 (単)従業員数 平均年齢 平均年収
9628 燦HD 670人 52人 49歳 790万円
2485 ティア 480人 449人 37歳 543万円
2344 平安レイサービス 243人 173人 43歳 591万円
7040 サン・ライフHD 459人 311人 38歳 456万円
7864 廣済堂 1,337人 899人 44.1歳 502万円

【業界分析】

葬儀業界は伸び悩んでいます。2016年の死亡者数は130万人と7年連続して戦後最高を更新していますが、葬儀単価が低迷しているため、市場規模は拡大してません。その要因として、葬儀の多様化が挙げられます。近年、霊園や生花業など周辺業種だけでなく、JAや生協、電鉄など異業種からの参入も相次いでいます。こうした新規参入が増える一方、少人数の家族層が増加。火葬だけ行う直葬も登場しています。さらに従来型の葬儀でも志望者の高齢化による式への参列者減少で精進落としなどの売上が縮小しています。以下のグラフにもあるとおり、死亡者数は168万人のピークを迎える2040年まで増加し続けますが、競争激化で再編、淘汰も始まりそうです。
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2018年3月期、葬祭業全体の売上高は1.2%増でした。葬儀1件当たりの単価は減少傾向にある一方で、2017年の人口動態統計では死亡数が1,340,397人と前年に比べ約2.5%増。売上高1位のメモリード(非上場)は1.7%減。2位の燦HDは7.5%増という結果でした。新規出店を進め、特に首都圏の収入が伸びたという。伸び率が11.1%と最も高かったのはウエディングも葬儀も手掛けるラックでした。上位10社中7社が葬儀1件当たりの平均単価と平均来場者を公開。単価は7社で単純平均すると130万円。同じ7社の前年度の平均から25,300円減りました。来場者は7社で単純平均すると60人で前年度から約3人減少。客単価でみても1年前から下がったと答えた企業は41社と70.7%に上りました。国立社会保障・人口問題研究所は40年ごろまでは死亡数が増え続けると推計。家族葬など小規模な葬儀の施行件数が増えていくのが業界の大きな流れになりそうです。遺骨ペンダントやミニ骨つぼなどの「手元供養」商品や家具調の仏壇が人気を集めるように、時代に合った供養への需要は根強い。人々の価値観の変化に対応した提案も重要になるでしょう。
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【財務分析】

時価総額が同水準の競合他社と財務分析を行いました。

[総合評価]
総合評価として、燦HDは「割安性、収益性、割安性、成長性」と効率性以外はトップの評価となりました。ただし、あくまで財務分析は現状把握でしかないので、あまり過大評価しないよう注意したいところです。
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[割安性]
山口式期待利回りは、山口揚平氏の書籍『ほんとうの株のしくみ』に紹介されていた理論株価の算出から期待利回りを算出しています。簡易期期待利回りは、「営業利益×10+ネットキャッシュ」にて算出した想定時価総額と現在の時価総額を比較した期待利回りを算出したものです。燦HDは、競合他社と比較して非常に割安という判断になりました。
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[効率性]
ROEは燦HDが最も低いですが、ROAROEが1%しか違わないことから、負債はほぼなく財務は鉄壁です。若干効率性においては他社に劣るでしょう。
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[収益性]
燦HDは売上高も利益も他社と比べて非常に高水準です。営業利益率においては平安レイサービスが18%と最も優れていましたが、それでも13.5%と非常に高い利益率を維持できているので、収益性も優れていました。
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[成長性]
営業利益の伸び率は素晴らしいですが、設備投資が売上高と比べて他社よりも低いため、少々先行投資の部分は懸念されます。
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[安全性]
自己資本比率82%と非常に良好な状態です。安全性の面は特に問題ないでしょう。
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【事業内容】

燦HDは葬儀の請負と葬儀に付随する商品やサービスを展開している企業です。燦HDの掲げている中期的な数値目標は以下のとおりです。
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※会社HPより抜粋

燦HDの事業セグメントは次のように分かれています。
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有価証券報告書より抜粋(2019.6.28提出)

セグメント構成として、売上高の67%を公益社が占めています。
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公益社[公式]
https://www.koekisha.co.jp/


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[公益社 東京本社]
住所:東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館14階


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[公益社 大阪本社]
住所:大阪府大阪市北区天神橋4-6-39

公益社の特徴は主に以下4点のようです。
●大手葬儀業界の中で一番歴史がある
東証1部上場企業
●対応できる葬儀の形式が豊富
●年間10,000件以上の実績が豊富

ただ、2016年3月に社員からの内部告発で火葬ミスの隠ぺいが発覚しています。悪いニュースもあります。
https://www.sankei.com/west/news/160330/wst1603300004-n1.html

●なにで稼いでいるか?

燦HDは公益社グループの葬儀施行で大半の売上を出しています。以下の表は13年分の葬儀施行に関する情報をまとめたものです。
全体として、施行件数自体は伸びているものの、大規模会館を使用した施行件数は年々減少しており、「支店・営業所附属会館」による施行件数が増資していることが伺えます。今後、如何に施工単価を引き上げていくかが大きな課題となるでしょう。
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有価証券報告書より作成

●なぜ稼げているか?

ただ、売上全体の67%は公益社が占めていましたが、最も利益を稼いでいるのは「持株会社」です。営業利益率も38%と非常に高いです。
持株会社は「㈱公益社、㈱葬仙、タルイ㈱」が使用する葬儀会館等の不動産賃貸に対しても収益を上げています。また、連結子会社4社に対して役員を通じて経営指導を行うほか、各社から総務、人事、経理、情報システムの事務等を受託しています。あとは公益社グループによる高単価の葬儀施行が利益の源泉となっている模様です。
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●今後どのような変化があるか?

燦HDは、広告宣伝費を18.3期4,000万円、19.3期4,800万円と使っています。積極的な営業エリア拡大に取り組んでいるようで、2018年度は新たに3会館をオープン。2016~2018年度までの3年間で計10会館をオープンしています。
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新規事業として、ラーメン店「うまい麺には福来たる3号店」を2018年12月21日にオープンしています。
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ラーメン店は、食べログの評価がわりと高めでしたw
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うまい麺には福来たる[公式]
http://umaimenpuku.jp/delicious/

また、フランチャイズ方式による介護事業として、新規リハビリ特化型デイサービス「ポシブル池田2号店」(大阪府池田市)の開業を2018年7月に行っています。

ポシブル池田[公式]
http://www.possible-plus.co.jp/

今後、ラーメンや介護の収益も上乗せされることが期待されます。

●今後どのくらい稼げるか?

はっきりしたことは言えませんが、今後、令和22年まで死亡者数が増加することが予測されており、向こう10年間は年平均約1.5%の伸び率で増加する予測が出ています。葬儀自体が必要となることは確実ですが、葬儀も家族中心の近しい人だけで行う家族葬が増えており、無宗教葬や一日葬など葬儀の形も多様化しています。葬祭業界は法的規制、行政指導のない業界でなため、裏を返せば事業への参入障壁が低いことを意味します。小規模化傾向が続いていることから、葬儀施行単価の下落にもつながっていて、葬祭会館の新規出店や、ネットを通じた集客など、激しい競争が続くことが想定されます。燦HDは、葬儀施行収入全体の11%を占める「社葬」を中心とする大規模葬儀(500万円超の葬儀)の受注件数・金額の多寡により、業績は影響を受ける可能性があるため、如何に大規模の葬儀を多く施行するかが一つポイントとなるでしょう。

【さいごに】

私にとって投資とは、将来へ向けた種まきです。今後、葬儀の形は色々と変化していくことが想定されますが、結局のところ、世の中や人のニーズに応えられる会社であるかどうかが成長のカギを握ると思っています。5年後も変わらず人は亡くなるので、その時に必要とされるサービスを扱っているか。その点をしっかり見ていくことが燦HDの投資において重要になってくるでしょう。

価格水準として、2019年3月期に最高益を更新していることからも予想PERはかなり割安な水準にいます。競合比較の一覧にもあるとおり、競合他社と比べても燦HDが最も低PERです。
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配当利回りは一時期、最大3.4%まで上がっていました。株価が2,000円にまで下落すれば予想配当利回りも3%を超えますので、ひとまず株価の暴落を待ちとたいところです。
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最後まで、お読みくださり、ありがとうございました。


※本記事は、株式投資をする際の参考となる情報提供を目的に、自らの経験および独自に調査した結果に基づき作成したものです。確実な利益を保証するものではありませんので、投資に関する最終決定は必ずご自身の判断で行ってください。