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フィッシャーによる銘柄選択ポイント15

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次の項目にほとんど当てはまる企業は、とても魅力的な投資対象となる。

1.今後、少なくとも5年に渡り、売上増が期待できる製品やサービスがあるか?
投資対象とする会社は経営者が優秀であって、技術革新や研究開発が活発に行われている業種の企業に絞り、企業が高い成長力を維持できるような舵取りを経営者がしているかどうかに対して常に目を光らせていることが必要になる。これが投資対象を選ぶ上で第一に考えなくてはならないポイントである。

2.現在の人気商品が市場の限界を迎えても、売上増のために新製品や新製法の開発していく決意を持っているか?
どれだけ有望な製品でもいずれ市場は緩和するので、積極的な姿勢のある企業が最も魅力ある投資対象となる可能性が高い。

3.研究開発の規模と比較して、どれだけの成果が表れているか?
研究開発費と売上高を割った割合が競合他社と比較してどうか確認し、多額の経費を注ぎ込む価値があるかどうかIRへ確認した上で判断する。

4.営業部門は平均以上の力を持っているか?
IRや競合他社、顧客など関係者への聞き込みをして営業力の強さを確認する。

5.高い利益率を確保しているか?
売上がいくら大きくても利益が増えなければ意味はない。売上高営業利益率を数年単位で確認し、競合他社と比較してできるだけ最高の利益率を誇る企業へ投資する。例外として、売上高を年々伸びているにもかかわらず、利益に至ってない会社が将来の成長のため、あえて収益の大部分を研究開発や販売促進に注ぎ込んでいる可能性があるので、そのような会社は利益率が低い理由を調べる価値がある。

6.会社は利益率を維持し、さらに改善させるため何をしているか?
投資家が重視すべきことは、過去の利益率ではなく「将来の利益率」である。商品の値上げで利益率を良くすることができるが、これは長続きしない方法である。値上げよりも良い方法は財務内容の改善や生産の管理の部署を設けることである。優秀な企業は経費の削減を果たしているものである。

7.従業員と良好な労使関係を築いているか?
基本的に労働組合のない企業は平均以上に良好な労使関係を保っている。会社の離職率と平均給与を競合他社と比較して労働者の満足度が概ねどの程度か確認する。賃金を抑えて利益を確保している会社は近いうちに弊害の出る可能性が高い。そもそも従業員一人一人を大切にしないような経営者が投資に値するような企業を作ることはできない。

8.管理職の能力を引き出すような環境を作っているか?
企業は上級管理職と良好な人間関係を作ることもとても重要である。投資に値するような会社は上級管理職が社長や会長を信頼して気持ちよく仕事をしているものである。

9.管理職レベルの優秀な人材が豊富にいるか?
小さな会社の場合、本当に能力のあるワンマン社長が一人いるだけで見事な業績を上げることがあるが、その中心人物が働けなくなった時、会社は急転落する可能性がある。お偉方が各部署の日常業務にまで口を出すような企業では優秀な人材が育たないので、投資対象とすべきではない。

10.しっかりとしたコスト分析と財務管理を行っているか?
いくら数値分析をしても実態を掴むような情報はほとんど得られず、関係者へ聞き込みをしても詳しく把握している人などほぼ皆無であるため、この点においては財務管理が重要であって、どの程度までなら個人の力で分析し評価が可能なのかを認識できていれば十分である。

11.競合他社との競争を勝ち抜くための能力を十分に備えているか?
企業を守る根本的な力は特許ではなく、他社よりも進んだ「技術力を保つこと」から生まれるのである。特許よりも「製造技術、販売網、サービス組織、得意客、消費者に関する知識」といったものの方が大きな力になる。大企業が利益率を維持するため特許に頼るようになったら、それは投資家の観点から危険な兆候にあると見るべきである。

12.収益に関して長期的な展望を持っているか?
「聞き込み」をして、目先の利益を犠牲にしてでも得意先との関係を作る会社であるかどうか見極める。長期的にはこのような会社が最大の収益を手にする。

13.会社の成長のために増資が必要な会社かどうか?
他の14のポイントに多く当てはまるような会社は現金と借り入れ余力の合計が今後数年間において会社に必要な資金をまかなうのに十分かどうか確認する。

14.経営が順調な時は気軽になんでも口にするのに、経営が困難な状況に陥ったり、市場の期待を裏切るような出来事が起きた時、経営者は口を閉ざしたりしないか?
どれだけ好調な企業であっても、思いがけない災難に遭遇することは平均の法則から免れることができない。大切なことはこのような事態となった時、経営者がどう反応するかである。口が重くなる経営者は、口が重くなる理由があるからであり、いずれにせよ、悪いニュースを公表せず隠そうとする企業は投資対象から除外することが賢明である。

15.経営者は本当に誠実だろうか?
経営者は会社の資産を管理する立場にあるので、一般株主の資金を使って合法的に自分自身や家族が利益を得るようにする方法はいくらでもある。このような会社を見極める方法は「聞き込み」が大いに威力を発揮する。「有能な経営陣に対する報酬」という名目でストックップションを乱発している会社は経営者が私腹を肥やすために会社を私物化している可能性が高い。経営者が株主に対して強い使命感を欠く企業は、他の全ての点でどれほど優れていたとしても投資対象とすべきではない。



【いつ売るべきか】
株を売る理由は下記の3つしかない。
1.投資対象を選択する時点で判断を誤っており、その企業が実際には思っていたほど優れた条件を備えていなかったことが次第に明らかになった場合
2.時間の経過とともに企業が変化して15個のポイントを以前のように満たさなくなってしまった場合、その株は例外なく売るべきである
3.現在投資している成長株よりもっと有望な成長株が出てきた場合、乗り換えるために売っても良いが、ちゃんと調べていればこの理由で売ることはほぼない

株式投資には2つの大きな特徴がある。
1.適切なやり方で投資をすれば驚くほど大きな利益を手にできること
2.そのようなやり方をするためには高いレベルの技術と知識と判断が必要なこと
大切なことは自分の犯した間違いに早目に気づくことである。見込み違いの銘柄は塩漬けにするのではなく早めに売却し、自由な資金に変えた上で大きな利益が望める銘柄に投資し直すことが特に大切である。時が立つほど大きな価値を生み出してくれる株は決して売らないこと。